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今日の一冊:超訳百人一首 うた恋い。(本棚から)
和歌物語 五
うた恋い。1巻も半分に達しました。
和歌物語五は、3巻の付録DVDにも、
主役をかえて取り上げられているお話で、とても好きな一話です。
<<以下、ネタバレです>>
「今はただ 思いたえなむ とばかりを 人づてならで いうよしもがな」
<左京大夫道雅>
二人は秘密の恋をしていた。
主人公は、和歌物語三に登場した藤原道隆の孫、藤原道雅(みちまさ)。
その相手は、伊勢神宮の斎宮をつとめた当子(まさこ)内親王。
斎宮をつとめた内親王は、斎宮のつとめを終えた後も、
生涯独身を通すか、天皇の後宮に入るかのどちらかで、
家臣に嫁ぐことはほとんどなかったのだ。
二人が初めて会ったのは、当子が斎宮となることが決まり、
都を離れて伊勢に向かう前の日の夜、三年前のことだった。
当子は、都を離れる前に生まれ育ったこのまちを目に焼き付けたいと、
乳母だけをつれて、夜に宮中を抜け出してきたのだった。
夜歩きをしている道雅を偶然見つけた当子は、
用心棒に任じて、ついてこさせた。
内裏が見える高台に上った当子に、
「左手が三条天皇(当子の父)のおわします清涼殿、
中から右奥が宣耀(せんよう)殿、お母君の住居です。」
当子は眺めながら、
伊勢に下りたくない、京を離れたくない、
父上と別れるのはイヤだと言って、泣き出してしまった。
なんとかなぐさめようと慌てる道雅は、
「あ~そうだ!ホラこれ!!
花!!京の花だ!!草!!
好きなだけ持ってけ!!」
と、周りの草花をとって渡し、干し肉や土までとって渡そうとする。
その様子を見ていた当子は、ふきだしてしまった。
「アハハっ!ありがとう!
おまえ、みかけによらず、とても優しいのね!」
泣き止んだ当子にほっとしつつ、
「ハハ・・・見かけによらずは余計ですなあ?」
「好きですよ!」
「いや~、ハハハ・・・光栄デス・・・」
「おまえ、名はなんと申します。」
「あ~、藤原道雅です。」
「道雅、道雅ね。忘れませんよ。
ねぇ道雅?
私が京に戻れたら今のように私を負うて、
ここに連れてきてくださいますか?」
「・・・ええ。
宮様が望まれるなら喜んでお供させて頂きましょう?」
「うれしいっ。必ずですよ?」
当子が都を離れたあとも、道雅はその時のことを時々思い出していた。
そして、当子が京に戻ってきた今年の秋、文を贈ったのだ。
今日に戻れてよかったですね、と。挨拶程度のつもりで。
ところが思いがけず当子から返事が届いた。
当子も道雅を忘れていなかったのだ。
そして二人は、ひそかに会う仲になった。
人のうわさにもされるようになった二人だが、
斎宮をつとめた内親王と臣下の結婚が許されるわけがない。
このまま二人の関係が、今は天皇のつとめを終えたとはいえ、
父の三条院に知れれば、道雅は罰を受けることになるに違いない。
だから、と当子はいう。
「結婚してしまえば話は別!!
愛娘の夫がそれ相応の地位につけるよう、父が計らって・・・」
「私はそんなのはゴメンです!!」
「なぜ?」
「それでは私がまるで・・・
出世のためにあなたに近づいたようではありませんか!」
「ま、道雅ったら!
心配せずとも私はお前の愛を疑ったりは・・・」
「あなたではなく!
周りがそう思うと言っとるんです!
そのような軽挙に出て、あなたや私、
中(なかの)関白家の名を貶めるわけにはまいりません!!」
「・・・でも、それならば・・・
私とおまえは、どうやって一緒になるのです。」
「で、ですから、そう急かされずに・・・
待っていなさい!!
私は偉くなります!
出世して・・・
必ずや公然とあなたを御所からお連れしますから!
約束いたします!」
「そうね・・・
ごめんなさい。私、せっかちすぎだわね。
応援していますよ道雅!
必ず私を連れ出してくださいね!」
当子は道雅に見えないところで涙を浮かべつつ、
そう答えたのだった。
約束をしたもののどうやって出世したものかと悩む道雅のところに、
当子の乳母がやってきて、恐れていたことを伝えた。
三条院に二人のことがばれたのだ。
院は大変お怒りで、周りのとりなしも聞かず、
当子を母の宮に移され、厳しい監視をつけられるようになった。
二人が会う手引きをしていた乳母も罪を問われて宮を追われ、
二人は会うことすら出来なくなってしまったのだ。
もともとは雲の上の方。
今まで会えたのが奇跡だったことに今更きづく道雅。
当子は気づいていたのだ。
正当に、自分たちが結ばれることがないことに。
つまらない意地にとらわれずにさらえばよかった。
そう思っても今ではもう遅い。
道雅は筆をとって文を書き、
屋敷の当子がいるだろう屋敷の塀の外まで枝を伸ばしている松に結びつけた。
「今はただ 思いたえなむ とばかりを 人づてならで いうよしもがな」
あなたに会えなくなった今
ただひとこと
あきらめるよ と
直接伝えたいだけなのに
ここから感想です。
斎宮という役職は、天皇の娘に生まれた内親王が勤めたそうですが、
伊勢神宮だけでなく、賀茂神社なども含めて、いくつかの神社があり、
何人もの人が代々、その運命に翻弄されたようです。
次の話の主人公の藤原定家の思い人、
式子内親王も同じ境遇だったわけですが、
かえすがえすも切ない。
役目をつとめるだけでも、家族と離れて一人遠い土地に行き、
帰ってきてからも、生涯独身がほとんどとは。
3巻の付録DVDには、当子の視点から見たこの話が語られていますが、
本編以上に感動的です。
他の資料を読んだりしたら、
このときは、周りの人達もなんとむごいことをと、
三条院の仕打ちを非難する人もいたようですが、
なんともならなかったのですね。
しかも当子は23歳の若さでなくなったとか。
こんなに短い命だったのであれば、
その間だけでも幸せにしてやればと、
三条院も後悔にくれたことだろうと思ってしまいました。
さて、うた恋い。1巻目も次がラスト、です。
本の概要と、これまでの和歌物語へのリンクはこちら↓
うた恋い。全体感想
和歌物語 五
うた恋い。1巻も半分に達しました。
和歌物語五は、3巻の付録DVDにも、
主役をかえて取り上げられているお話で、とても好きな一話です。
<<以下、ネタバレです>>
「今はただ 思いたえなむ とばかりを 人づてならで いうよしもがな」
<左京大夫道雅>
二人は秘密の恋をしていた。
主人公は、和歌物語三に登場した藤原道隆の孫、藤原道雅(みちまさ)。
その相手は、伊勢神宮の斎宮をつとめた当子(まさこ)内親王。
斎宮をつとめた内親王は、斎宮のつとめを終えた後も、
生涯独身を通すか、天皇の後宮に入るかのどちらかで、
家臣に嫁ぐことはほとんどなかったのだ。
二人が初めて会ったのは、当子が斎宮となることが決まり、
都を離れて伊勢に向かう前の日の夜、三年前のことだった。
当子は、都を離れる前に生まれ育ったこのまちを目に焼き付けたいと、
乳母だけをつれて、夜に宮中を抜け出してきたのだった。
夜歩きをしている道雅を偶然見つけた当子は、
用心棒に任じて、ついてこさせた。
内裏が見える高台に上った当子に、
「左手が三条天皇(当子の父)のおわします清涼殿、
中から右奥が宣耀(せんよう)殿、お母君の住居です。」
当子は眺めながら、
伊勢に下りたくない、京を離れたくない、
父上と別れるのはイヤだと言って、泣き出してしまった。
なんとかなぐさめようと慌てる道雅は、
「あ~そうだ!ホラこれ!!
花!!京の花だ!!草!!
好きなだけ持ってけ!!」
と、周りの草花をとって渡し、干し肉や土までとって渡そうとする。
その様子を見ていた当子は、ふきだしてしまった。
「アハハっ!ありがとう!
おまえ、みかけによらず、とても優しいのね!」
泣き止んだ当子にほっとしつつ、
「ハハ・・・見かけによらずは余計ですなあ?」
「好きですよ!」
「いや~、ハハハ・・・光栄デス・・・」
「おまえ、名はなんと申します。」
「あ~、藤原道雅です。」
「道雅、道雅ね。忘れませんよ。
ねぇ道雅?
私が京に戻れたら今のように私を負うて、
ここに連れてきてくださいますか?」
「・・・ええ。
宮様が望まれるなら喜んでお供させて頂きましょう?」
「うれしいっ。必ずですよ?」
当子が都を離れたあとも、道雅はその時のことを時々思い出していた。
そして、当子が京に戻ってきた今年の秋、文を贈ったのだ。
今日に戻れてよかったですね、と。挨拶程度のつもりで。
ところが思いがけず当子から返事が届いた。
当子も道雅を忘れていなかったのだ。
そして二人は、ひそかに会う仲になった。
人のうわさにもされるようになった二人だが、
斎宮をつとめた内親王と臣下の結婚が許されるわけがない。
このまま二人の関係が、今は天皇のつとめを終えたとはいえ、
父の三条院に知れれば、道雅は罰を受けることになるに違いない。
だから、と当子はいう。
「結婚してしまえば話は別!!
愛娘の夫がそれ相応の地位につけるよう、父が計らって・・・」
「私はそんなのはゴメンです!!」
「なぜ?」
「それでは私がまるで・・・
出世のためにあなたに近づいたようではありませんか!」
「ま、道雅ったら!
心配せずとも私はお前の愛を疑ったりは・・・」
「あなたではなく!
周りがそう思うと言っとるんです!
そのような軽挙に出て、あなたや私、
中(なかの)関白家の名を貶めるわけにはまいりません!!」
「・・・でも、それならば・・・
私とおまえは、どうやって一緒になるのです。」
「で、ですから、そう急かされずに・・・
待っていなさい!!
私は偉くなります!
出世して・・・
必ずや公然とあなたを御所からお連れしますから!
約束いたします!」
「そうね・・・
ごめんなさい。私、せっかちすぎだわね。
応援していますよ道雅!
必ず私を連れ出してくださいね!」
当子は道雅に見えないところで涙を浮かべつつ、
そう答えたのだった。
約束をしたもののどうやって出世したものかと悩む道雅のところに、
当子の乳母がやってきて、恐れていたことを伝えた。
三条院に二人のことがばれたのだ。
院は大変お怒りで、周りのとりなしも聞かず、
当子を母の宮に移され、厳しい監視をつけられるようになった。
二人が会う手引きをしていた乳母も罪を問われて宮を追われ、
二人は会うことすら出来なくなってしまったのだ。
もともとは雲の上の方。
今まで会えたのが奇跡だったことに今更きづく道雅。
当子は気づいていたのだ。
正当に、自分たちが結ばれることがないことに。
つまらない意地にとらわれずにさらえばよかった。
そう思っても今ではもう遅い。
道雅は筆をとって文を書き、
屋敷の当子がいるだろう屋敷の塀の外まで枝を伸ばしている松に結びつけた。
「今はただ 思いたえなむ とばかりを 人づてならで いうよしもがな」
あなたに会えなくなった今
ただひとこと
あきらめるよ と
直接伝えたいだけなのに
ここから感想です。
斎宮という役職は、天皇の娘に生まれた内親王が勤めたそうですが、
伊勢神宮だけでなく、賀茂神社なども含めて、いくつかの神社があり、
何人もの人が代々、その運命に翻弄されたようです。
次の話の主人公の藤原定家の思い人、
式子内親王も同じ境遇だったわけですが、
かえすがえすも切ない。
役目をつとめるだけでも、家族と離れて一人遠い土地に行き、
帰ってきてからも、生涯独身がほとんどとは。
3巻の付録DVDには、当子の視点から見たこの話が語られていますが、
本編以上に感動的です。
他の資料を読んだりしたら、
このときは、周りの人達もなんとむごいことをと、
三条院の仕打ちを非難する人もいたようですが、
なんともならなかったのですね。
しかも当子は23歳の若さでなくなったとか。
こんなに短い命だったのであれば、
その間だけでも幸せにしてやればと、
三条院も後悔にくれたことだろうと思ってしまいました。
さて、うた恋い。1巻目も次がラスト、です。
本の概要と、これまでの和歌物語へのリンクはこちら↓
うた恋い。全体感想
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