
<概要>
トマス・クイックと名乗り、30人以上の男女を殺害したと自白した
スウェーデン人の男、ストゥーレ・ベルクワール。
遺体の一部を食べたと自白したことから、
「人食い」とも呼ばれた彼は、8件の殺人について有罪判決を受けていた。
気鋭のジャーナリスト、ハンネス・ロースタムはこの事件に興味を抱き、調査を開始する。
2008年6月からロースタムはクイックと何度も面会を重ねる一方、
関係者の取材を進め、裁判の資料、病院のカルテ、警察の取り調べ記録、
現場検証を収めたビデオなどを丹念にあたっていく。
やがてロースタムは、驚愕の真実を明らかにし、スウェーデンに激震を走らせる!
想像を絶する大事件の全貌を描く、衝撃のノンフィクション!
<感想>
私は一つの場所で正職員として働くのをやめて、
今は4つの職場に、日ごとそれぞれにお手伝いに行っています。
そのうちの一つの職場で、翻訳に関わる仕事をしていて、
翻訳の勉強ができる学校からのニュースレターをいただいています。
そこには、翻訳の勉強を重ねて実際にプロの翻訳者になった人の
訳本などが紹介されているのですが、その紹介記事の中でこの本が目に留まりました。
30人以上も人を殺した凶悪犯がどんな思いでどんなことをやってきたのか、
というようなドキュメンタリーなのかと思って読み進めて行ったら。。。
だんだん、本当にトマス・クイックは事件を起こしたのかな、
と疑いを持つような話が出始めてきて、結果、
実は8件すべてが冤罪!!!
さらに、実は一人も殺していなかった、という話でした。
いや~、まさか、まさか。。。と思いながら、
ハンネスが刑務所で面会しているストゥーレから、
「もしおれがほんとうに、ひとつの殺人も犯していないとしたら・・・」
と言い出したときの衝撃。
後書きにもありましたが、真実は小説よりも奇なりを地で行く、最高のミステリーでした。
容疑者Xよりも、ある意味、胸がどきどきしたかもしれません。
しかもこの冤罪事件、2000年代に入ってからも起きているのです。
DNAデータなどで調べたら、昔犯人とされていた人が実は犯人じゃなかった、
という形で冤罪だったことが判る例は多いような気がしますが、
DNA調査なども行われたにも関わらずその証拠が握りつぶされたり。
捜査の音声記録などがそのまま書かれている部分は、
読みながら本当に冷や汗が出てくるような恐ろしさです。
もちろん、恐喝とかそういうことではなく、
責任を持つべき人達が、目の前に楽で自分の利益になる結果をぶら下げられると、
それにあらがうことが出来ずにどんどんエスカレートしていく姿が恐怖をあおります。
ちなみに、ほんとにこの話は本当なのかな、と、
トマス・クイックのことを検索してみたら、
顔写真入りでその後の彼のことがニュースに取り上げられていました。
せっかくなのでそれは、本を読んでから検索してみるといいと思います。
いろんな言葉を尽くすよりもまず、
厚みはありますが、1章1章は短くテンポよく進んでいきますし、
いろんな意味で、本が好きな人だったら一度は読んでみていいのでは、と思う作品でした。
こんなすごい話だったらまた、ノンフィクションを読んでみるのもいいな。
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<概要>文芸春秋サイトより
NHK木曜時代劇「まんまこと」のシリーズ最新作!
江戸町名主の跡取り息子・麻之助が、
幼なじみで町名主を継いでいる色男・清十郎と、
堅物の同心・吉五郎とともに、さまざまな謎ともめ事の解決に挑む、
大好評連作短篇シリーズの第5弾!
今回の密かなキーワードは実は「女難」。
独身で嫁取りの話がひきもきらない清十郎ですが、いったいその理由は?
未だ妻を亡くした悲しみが癒えない麻之介、
養子に入った家で年齢の離れた許婚のいる吉五郎、
そして彼らの親友で大金持ちの金貸し丸三とその妾のお虎。
いずれも清十郎の運命の人が現れることを願っているが、
様々な障害や思わぬ事件に巻きこまれ……。
<感想>
畠中恵さんの書いてるシリーズでは一番好きな、「まんまこと」。
ドラマになってしまって、微妙にミーハーファンが増えそうでいやだな、
とか思ってはいつつも、やっぱり最新作が出ると読んでしまいますね~。
今回は久々に、お由有さんとの切ない絡みが多くて、
初期の頃の麻之助を思い出させてくれました。
タイトルストーリー「まったなし」を含む5話はそれぞれ、
伏線をひきつつ、最後の「昔から来た文」にうまくまとまっていきます。
今回の主人公はある意味清十郎で、
とうとう、まったなしの状況に追い込まれて、
お嫁さんを娶ることになりました。
そういえば、しゃばけの方も若旦那の親友が確か好きな人が出来たんだったような。
前巻は、なんだかしゃばけシリーズと雰囲気似てきたな、
とか思っていましたが、今回はどっぷり恋愛物として楽しませてくれました。
本物主人公の麻之助とお由有さんもまた新たなステージに。
こちらはやっぱり最初のすれ違いのまま、
どうしてもうまくいかないんですね。
どちらが悪いわけでもなく、どちらが裏切ったわけでもなく、
二人ともにお互いを思っていたのに、どうにもならない。
江戸時代だから誇張されている気もするけれど、
今の時代でも似たようなことはあるものですよね。
タイミングが合う人とタイミングが合わない人。
お互いが結婚して、またお互いが一人になって、
どちらも憎からず思っていても、どうにもならない。
私が惚れ込んだ、1巻の最後の話を思い出させてくれる、
ほろりと切ないまんまことシリーズの醍醐味が味わえました。
でも最初の話を思い出したら、なんかずいぶんと麻之助がおとなしくなったな。
このシリーズの、「だが、だがだがだが」という言い回しが好きだったんだけど、
最近使われなくなったし。
時間が経ってやっぱり、麻之助が大人になったってことでしょうか。
早く、麻之助にも幸せが訪れてほしいです。
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<概要>
「あーあ、つまんねーの。自殺しよっかな」
人類最強の請負人・哀川潤。
強くなりすぎた彼女に、ついに世界のすべてが降伏する。
倒すべき敵も、応えるべき依頼も失った請負人に、
そのとき、初めての「恋」が襲い掛かる!
「戯言」では済まされない、「人間」の枠を超えた、
「最強」のラブストーリー!
<感想>
戯言シリーズから派生した第2弾、なのかな?
人類最強、哀川潤さんが主人公のシリーズが始まったそうです。
戯言シリーズは結構好きだったし、
派生物の人間シリーズも結構好きだったので期待大!だったのですが、
読み終わった感想としては。。。う~ん。
少なくとも期待よりは面白くなかったな。
あまりにも強くなりすぎちゃって、敵対できるのが地上にいなくなって、
とうとう相手が宇宙人になるという。。。
なんかこうなるとドラゴンボールみたいだな~。
強くなりすぎてもやっぱり人間が好き、という片思いの話、なんだろうか。
会話文が多い西尾維新らしい文章だけど、
阿良々木君と間宵ちゃん、または神原さんのような、
または七花ととがめみたいなような、
リズムのいい、笑える会話でもなく、
なんか今回のパートナー役のとろみちゃんがひたすら愚痴ってる感じで。
頭から最後までいまいちでした。。。残念。
本筋ではないけど、途中で話に出てきた子供って。。。
え、あれあおといーちゃんの?
さすがにそんなことないのかな。
すごい気になる。
西尾維新本人も書いてたけど、
ジョーカーみたいな人なので、主人公にすると話を作るのが難しいのかな。
ほかのキャラとの絡みで出てくる話の方が面白いと思います。
最強シリーズをシリーズ化するくらいなら、
物語シリーズのように、終わりました宣言後でもいいから、
ぜひ戯言の続編を作って欲しいな~。
掟上今日子の探偵シリーズからこっち、
なんとなく、スランプなのでは?
笑えて泣ける西尾維新復活に期待したいです。
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<概要>
散歩の途上、ロバート・マッキンタイアは眼下の大邸宅を眺めやった。
昼夜兼行で押し寄せる作業員、搬入される貴重品の数々、次第に高くなる塔-。
近隣の耳目を集めた事業も大詰めらしい。
邸の主はラッフルズ・ホーなる男で、スパーリング司祭によれば現身の天使だという。
ホーと誼を通じて己がいかな変節を遂げることになるのか、
神ならぬ身のロバートはそのとき知る由もなかった。
<感想>
こちらもまた、図書館で偶然出会った本シリーズです。
もう何年ぶりになるかわからない、コナン・ドイル。
考えてみたら、ホームズシリーズ以外、この人の本は読んだことがない気がする。
コナン・ドイルというからにはやはり、推理物なんだろうなぁ、
と思いながら読んでみたら、なんか違う。
あれ、ずいぶん違う。。。
という感じでありました。
中編・短編あわせて8本。
結構オムニバスな感じでした。
・ラッフルズ・ホーの奇跡
タイトルストーリーだけあって、結構読み応えがありました。
ざっくりいえば、大金持ちの善人と深い縁を持ってしまい、
身の程以上の夢を見て、最終的には夢を見る前より不幸になってしまう、という話。
幸せな結末ではなさそうだなぁ、と思いつつ読みながら、
最後はこうなったのか~、という。
なんか人間の悲喜こもごもの描き方が、
池波正太郎に似ているような感じがする。
それにしても、錬金術が出てくるとは。
これ読んで、金属に電気をかけてみた人がいっぱい出たのでは?
とか思うとなんか面白いです。
・体外遊離実験
これはタイトル通りの話です。
今読むと、よくある使い古されたような話、ではあるけれど、
これを最初に書いたのがコナン・ドイルなのか、と思うと、感慨深い。
・ロスアミゴスの大失策
電気椅子での死刑を執行するために、
大罪人だから高電圧で刑を執行しようとしたら、
死ぬどころかかえって、殺せない体になってしまった、という話。
アメリカで電気椅子にかけたのに罪人が死ななかったというニュースが当時あって、
それをもじって書いた話らしい。
さすがイギリス人。当時としてはすごいブラックジョークだろうな。
・ブラウン・ペリコード発動機
世紀の大発明をした二人組が、
その成果を自分のものにしようとしてお互い自滅してしまう、という話。
ただひたすら暗い。
・昇降機
タイトルが時代を表してますね。
日本人は昔、こう読んでいたのかな、エレベーターのこと。
宗教狂っちゃった人が、エレベーターに乗った人ごとエレベーターを落とそうとして、
乗っていた人たちがうまく逃げだし、最後は宗教狂いだけが一人落ちちゃうという話。
これも、前の1編と同じく、暗い。そして怖い。
本当にありそうな話。
・シニョール・ランベルトの引退
これまた、暗い話。
奥さんの不倫に怒った旦那さんが、
奥さんの不倫相手のオペラ歌手の声帯を傷つけて、社会的に破滅させるという話。
この辺、連続してずっと、メロドラマとか殺人事件によく出てきそうな、普通の設定。
傑作選に入れるだけの話なの?
この当時にこういうことを考えた、というのがやっぱりすごいんだろうな。
・新発見の地下墓地
暗い話短編が4つ続きました。
婚約者がライバルにいいように遊ばれてしまった考古学者が、
恨みを晴らすために、新発見の地下墓地に連れて行って、
明かりも渡さずおいて帰り、殺してしまうという話。
暗い話4連続の中では、一番ワクワクしました。
うまいこと恨みを晴らして、学会でも大発見で名声を得た主人公、
その後幸せになれたのだろうか。
・危険!
イギリスと架空のヨーロッパの国が戦争を起こして、
兵糧攻めでイギリスが負ける、という空想話。
こんな風にうまくいくかはわからないとしても、
こういう話を考えたのはまだしも、発表するところがすごい。
これ、今ではありえないとは思うけど、
日本で考えたら、自給率がイギリスどころでなく、
どうしようもないことになりそう。
それぞれこんな感じでした。
全体としての読みごたえは、まぁまぁでした。
やっぱりラッフルズ・ホーが良かったかな。
これがなければ、ちょっと残念な1冊だったかもしれない。
H.G.ウェルズの短編集ほどのインパクトはやはりない。
またH.G.ウェルズが久々に読みたくなりました。
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<概要>(「BOOK」データベースより)
青いクラゲ、カツオノカンムリはほんとうに帆走する?
深海魚ハダカイワシがなぜなぎさに?
深海にすむ貝がらばかりのビーチがある?
アサガオガイはほんとうにクラゲを食べる?
帆をたてて群泳する青いクラゲに会いたい!
なぎさを歩けば、謎がいっぱい。
なぎさの新博物誌。
<感想>
春のイベントとの準備で子供用の書籍の棚を見ていたら、
知らない盛口さんの本を見つけてしまったので早速借りてきました。
久々に海に行ったばかりだし、しばらく前から海辺の拾い物もブームなので、
とても楽しく読めました。
それにしても、「ニューストン」。。。びっくり。
海の生き物はプランクトン、ネクトン、ベントスの3つに分かれる、
と思っていたら、今は4つ、なのですね。
海の表面、ちょうど海と空の境目の所に暮らしている生き物をニューストンと呼ぶそうです。
新しく見つかったから「ニュー」なのかな。
なじみのあるトビウオがこの仲間、と聞くとなんか不思議。
憧れのブルーマーリンも海水面近くにいると聞くけど、そうなのかな~。
それにしても、カツオノカンムリは荒波で浜に打ちあがってるのを見たことがありますが、
アサガオガイは貝殻さえ拾ったことないです。
この本を読んでたらほんと~にアサガオガイの殻が欲しくなりました。
貝がクラゲを食べるなんて。。。
終盤で盛口さんが見た、というたくさんのカツオノエボシとアサガオガイが海を漂っている様子。。。
想像すると、なんか夢の世界のようです。
いつかそんなシーンに出会えたらいいのに。
盛口さんの本は、雑草が面白い、もまだ読んでる最中。
いつも面白くて、はずれないですね~。
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